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篠突く - 禁断の果実 -
第8章 過去編二話 生きた証

悠は、自分の奥底からじわりと何かが込み上げてくるのを感じていた。それは、形となって、言葉となって、ベッドに投げるように置かれた孝哉の手を打つ。
「ねぇ、なんで私に言ってくれなかったのよ……? 私、あんたの姉なのよ」
悠の目から、ぽろりと涙が零れた。そんな姉に、孝哉は諭すように言った。
「言ったところで何になるの。そしたら、姉さんが助けてくれた? 代わりに殴られてくれた? 姉さん、絶対俺を庇うでしょ。でも、無理でしょ、そんな細い体で。死んじゃうよ」
孝哉は優しすぎた。何もかもを自分の背中に負って、自分を犠牲にする。彼は、俺が殴られることで父さんと母さんが幸せになるなら、俺を殴ることであの人達が姉さんに危害を加えないなら、それでいいよ、と微笑う。
泣かないでよ、姉さん。そう言って、彼は悠の涙をそっと拭う。
「あんたは、泣きなさいよ」
声は情けなく震えて、孝哉の鼓膜を打った。一番泣きたいのは、孝哉の筈なのに。
「ねぇ、なんで私に言ってくれなかったのよ……? 私、あんたの姉なのよ」
悠の目から、ぽろりと涙が零れた。そんな姉に、孝哉は諭すように言った。
「言ったところで何になるの。そしたら、姉さんが助けてくれた? 代わりに殴られてくれた? 姉さん、絶対俺を庇うでしょ。でも、無理でしょ、そんな細い体で。死んじゃうよ」
孝哉は優しすぎた。何もかもを自分の背中に負って、自分を犠牲にする。彼は、俺が殴られることで父さんと母さんが幸せになるなら、俺を殴ることであの人達が姉さんに危害を加えないなら、それでいいよ、と微笑う。
泣かないでよ、姉さん。そう言って、彼は悠の涙をそっと拭う。
「あんたは、泣きなさいよ」
声は情けなく震えて、孝哉の鼓膜を打った。一番泣きたいのは、孝哉の筈なのに。

