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篠突く - 禁断の果実 -
第9章 過去編三話 守るということ

父は溜め息を吐いて、口中で小さく舌を鳴らした。孝哉に何かを耳打ちしようと歩みを進めれば、ドン、という大きな音を立て、その道を悠が遮った。壁を突き刺すようにピンと伸ばされた彼女の腕は、込もりすぎた力と恐怖のせいでぶるぶると震えていた。だが、その声は迫力を失っていない。
「……日本語、わかるよね?」
女である悠の細い腕を除けることなど、父からすれば簡単なことだ。だが、彼はおずおずと後ずさりをした。孝哉を庇うのが自分の妻であったならそれもできただろうが、やはり父は、愛しい娘に乱暴なことなどできないようだった。
ふと入り口のほうを見ると、いつの間にか来ていたらしい母と目が合った。彼女は底冷えのするような瞳をこちらに向けており、そこからは何の感情も読み取れない。
恐らく、悠の声でも聞こえたのだろう。父と孝哉がリビングを出ていった後、トイレへ行くと言って席を離れた悠の、挑戦的なセリフの数々が聞こえてくれば、彼女の行く先はひとつしかないとわかる。父と同じように虐待をしていた母なら、容易なことだ。
「……日本語、わかるよね?」
女である悠の細い腕を除けることなど、父からすれば簡単なことだ。だが、彼はおずおずと後ずさりをした。孝哉を庇うのが自分の妻であったならそれもできただろうが、やはり父は、愛しい娘に乱暴なことなどできないようだった。
ふと入り口のほうを見ると、いつの間にか来ていたらしい母と目が合った。彼女は底冷えのするような瞳をこちらに向けており、そこからは何の感情も読み取れない。
恐らく、悠の声でも聞こえたのだろう。父と孝哉がリビングを出ていった後、トイレへ行くと言って席を離れた悠の、挑戦的なセリフの数々が聞こえてくれば、彼女の行く先はひとつしかないとわかる。父と同じように虐待をしていた母なら、容易なことだ。

