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篠突く - 禁断の果実 -
第2章 本編二話 吐露

林 紗絵がいないにも拘らず、未だに頭を下げ続けている弟の傍に、小さな部品のようなものが落ちていることに気がついた。彼女の忘れ物だろう。足音を忍ばせてそれを拾い、ポケットに押し込む。――いい子そうに見えて、案外やるようだ。
「……優しすぎるのも罪ね。あの子に告白されるよりも前に、あんたに夜這いをかけておくべきだった」
私がぽつりとひとりごとのように漏らした言葉に、孝哉は漸く土下座の体勢を解き、顔を上げる。
「……あの日、姉さんをセックスに誘ったのは俺だから」
「言えるじゃない」
「もう逃げないって決めたんだよ」
躊躇うことなくその四文字を吐き出した孝哉を、私は誇らしく思った。と同時に、嬉しさがこみ上げる。
彼は、血の繋がった姉である私とセックスをすることに後ろめたさを感じていた。行為後はいつも、己の欲望を私で満たしてしまったことを、ひどく後悔して嘆くのだ。時々、罪悪感から嘔吐することもある。だから彼は、激しい雷雨の日にしか私を求めてこなかった。雷の音が、雨の音が、私の声を消してくれるから。空の暗さが、部屋の暗さが、私の姿を消してくれるから。それでも、姉とセックスをしたという事実まで消すことはできない。けれど、姉以外の女とはセックスをしたくないのだと、彼は語る。
「……優しすぎるのも罪ね。あの子に告白されるよりも前に、あんたに夜這いをかけておくべきだった」
私がぽつりとひとりごとのように漏らした言葉に、孝哉は漸く土下座の体勢を解き、顔を上げる。
「……あの日、姉さんをセックスに誘ったのは俺だから」
「言えるじゃない」
「もう逃げないって決めたんだよ」
躊躇うことなくその四文字を吐き出した孝哉を、私は誇らしく思った。と同時に、嬉しさがこみ上げる。
彼は、血の繋がった姉である私とセックスをすることに後ろめたさを感じていた。行為後はいつも、己の欲望を私で満たしてしまったことを、ひどく後悔して嘆くのだ。時々、罪悪感から嘔吐することもある。だから彼は、激しい雷雨の日にしか私を求めてこなかった。雷の音が、雨の音が、私の声を消してくれるから。空の暗さが、部屋の暗さが、私の姿を消してくれるから。それでも、姉とセックスをしたという事実まで消すことはできない。けれど、姉以外の女とはセックスをしたくないのだと、彼は語る。

