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おじさまと咲姫
第30章 無駄
「『逃げなきゃ』って頭ではちゃんと理解してるのに、恐怖に足が竦みその場に立ち尽くす事しか出来なかった。ぎゅって目を閉じ、気付いたら-」
-ユウの腕の中でした。
聞き覚えのある名前に、昴の瞳孔が開く。
「高校に自転車で向かう途中、たまたま私の後ろ姿を見付けたらしいんです。それで自転車から降りて、声をかけようとしてところに自動車が…。考えるより先に、身体が動いたって。ユウも…悠聖も、気付いた時には私を両手で抱いてたって。それで…その時、ふたりとも怪我を」
唇を噛み締める咲姫を、昴はただ黙って見つめるしかない。
哀しみなのか。
憎しみなのか。
悔しさなのか。
或いは、そのどれでもないのか-少しの間両眼を閉じていた咲姫だったが、程なくゆっくりと開けた。
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