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おじさまと咲姫
第40章 綺麗
ちくちくする胸を宥め、すぐ目の前に座る彼を盗み見していれば、やがて静かに車は発進した。
何も言葉を発しない彼の後頭部をぼんやり眺めていたが-それから、斜め前の助手席に視線を移す。
ここに、座ったかもしれないんだ。
ううん-ここ以外には座らない。
そんなとこに、自分は座れない。
あの艶やかな栗色の長い髪が一筋、座席のどこかに落ちてるかもしれない。
いい匂いの香水が、まだシートベルトに染みついているかもしれない。
彼女の痕跡。
彼女の残り香。
あるかもしれないのに。
そんなとこ、絶対に嫌-。
唇を噛んだところで、我に返る。
何を考えていた?
猛烈な羞恥が自分を襲う。
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