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神は現で夢を見る
第2章 漆黒の乙女と薬師
「凪が…………死ぬ? 」
咄嗟には飲み込めなかった現実。
「あぁ、死ぬ」
追い討ちを掛ける晴明の言葉。
晴明とて、辛い現実だった。
元々、生前、陰陽師だった晴明は、此方に来て常世の闇から式神を作った。
己が娘として作り上げた式は、とても優秀で、晴明は、その式に凪と名を与え、いろんな事を教え込んだ。
天界と、人界と、地獄との狭間にあるこの『晴明屋敷』に、たまに酒を酌み交わしに来る友人にまで自慢する程に美しく成長した式は、晴明とその友人に慈しまれ、力を発揮していった。
そして、娘の凪が、側にいて可愛がってくれていた友人に懐くのも当たり前の事で、人界に降りると言い出した友人に、番を相談された時、迷う事無く凪を与えた。
知っての通り、友人とは薬師。
海の事だった。
「海、せめて、新しく造る式は、凪の魂をベースにしようと思う。凪とは違った式になると思うが、頼む。こらえてくれ」
くっと晴明が息を詰める気配が、海にも届いた。
晴明とて、辛いのだと、海も悟。
「今、凪と会えるか? 」
「勿論だとも。一週間だが、悔い無く過ごせよ。海」
晴明は、そう言って儚く笑った。