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神は現で夢を見る
第2章 漆黒の乙女と薬師
晴明の許可を得て、海は、愛しい女の下へと急ぐ。
凪との別れを急に告げられて、覚悟なんて出来はしない。
産まれて初めて知る、失うものの大切さと絶望感。
限り有る命を持つ者にしか、計り知れない絶望は、神の侭では知り得なかった。
「なぎっっ!! 」
ガタンと乱暴に開けられる襖。
形こそ平安時代さながらの建物も、間仕切りは御簾では無く、現代風にアレンジされている襖。
凪の部屋に有るものも、現代から持ち込まれた三面鏡やベッドだった。
ノックも何も有ったもんじゃ無い。
いきなり開け放たれた襖に、驚いたのは、起き上がっていた凪。
「あっ…………。海様………… 」
いきなり抱きつかれた凪は、海の様子にしどろもどろ。
抱き締められる力強さに、総てを悟った、聡明な心を持つ女。
「海様……。お父様にお聞きに成られたのね。私の事」
「何故だ、凪っ! 何故、お前なんだよっ!! 」
ぎゅっと腕に力が入る。
凪も、自由に成る手ではきゅっと海の服の裾を握る。
「海様……。ごめんなさい。あらがえなくて。貴方様を置いて逝く私を、許してなんて言いませんから」
「なぎっ………… 」
泣きそうに、まぶたを振るわせる姿は、儚げで美しい。
「お願い、海様………。私を抱いて……」
海に哀願する彼女は、ドキリトする程、印象深かった。