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神は現で夢を見る
第2章 漆黒の乙女と薬師
ゆっくりとした動きから、段々性急な動きへと変化していく海の動き。
それに重なる囀りと、スプリングの軋みは、肌を打つ音と共に重なりあって、夫婦の当然の営みを否応なく際立たせる。
夜の続く限り。
時の許す限り。
2人は、互いの愛を感じ合い、確かめあった。
「かい…………さま……… 」
「なぎっ………… 」
「愛して下さって、ありがとう御座いました………… 」
それが、今生の凪の最期の言葉だった。
新たな凪が誕生したと、晴明から知らされたのは、海の愛した凪と別れて、ひと月後の新月の夜だった。
今でも鮮明に思い出す。
晴明屋敷の門の前。
手を振る凪が唇を動かして、深々と頭を下げるその姿。
「私の事を愛してくれてありがとう。新しい私も、沢山愛してあげて下さいね………… 」
凪は、そう言って微笑んだ。
「そう言って、笑ったんだよ。俺の妻は。凪は…………。新しく妻を迎えろと、あいつはそう言ったんだよ。そう簡単に、気持ちの切り替えが、きくと思ってんのかね、本当にあいつは………… 」
一カ月前に最愛の妻と別れた海は、同じこの場所で晴明に訴え掛けていた。
晴明は鬼では無い。
式を操る陰陽師で有り、凪の父親だった。
逸れを踏まえて海は言い放ったのだ。
先程の言葉を。
気心の知れた友人に。
「でも、海は来た。あの子の思いに応える為に…………だろ? 」