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神は現で夢を見る
第2章 漆黒の乙女と薬師
ふっ…………。
そうのたまった友人を、海はしばし見やって、やがて口元を綻ばせた。
清々しい微笑みでは無い。
ちょっと困ったような、苦笑いのような。
言い表しずらい表情を見せた彼。
そんな彼を見て、晴明は思う。
彼が憤るのも無理は無い。
我が娘は、彼の心に寄り添い、支えて来たのだ。
同じ性質の同胞(はらから)すら居ない。
理解者は、少数。
無きに等しい、彼の御方(みかた)。
きっと、何時しか、心の支えに成ったのであろう、我が娘。
願わくば、二番目の娘も友の支えに成りますよう。
我は祈らずには居られない。
だがしかし。
誰に祈るべきものか?
はて、適した神が見当たらぬな。
此処の連中は、薬師を良くは思って居ないからなぁ。
神頼みは止めておこうと結論立てて晴明は友に言う。
「そうだ、海。あれの名、お前に付けさせてやろう。名付け親だな。因みにもう成人している。齢(よわい)は18だ。我の時代なら行かず後家だぞ。ほんに、来るのが遅いわ」
愁い顔の友人の肩を、晴明はポンポンと叩くと屋敷へと促した。
彼はほくそ笑む。
友人の驚く顔を想像して。
── 我ながら良い仕事をした。あのような出来映えなら、多少は昔の事も覚えていよう ──
晴明は、心の中でそう呟いた。