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神は現で夢を見る
第2章 漆黒の乙女と薬師
少女は、緊張で固まっていた。
今日は、少女の許嫁が来るらしいと、父親から聞いていた為だ。
出会った事も無い、今日初めて会う見ず知らずの男性。
彼女が彼女に成る前の彼女、所謂、前世の彼女の夫だった男だと、父親に告げられていても、彼女自身が会った事が無いのだから、知らない男だと思っても致し方なさすぎた。
相手は神様。
『薬師』と言う名前で、本名は『海』。
人間や生き物、地上に有る生きとし生けるものを愛し、憂う、優しい神様。
その優しさを、他の神様達は理解しずらくて、賛同する神様は極少数。
───そんな彼が地上に降りる時の為にあたしは造られた、彼だけの女───
やだな…………、そんなの。
自由なんて、端っからあたしには無いんだ。
俯き、考え倦ねる彼女の唇から、ため息が漏れる。
「あたしには、名前すら無い…………。とうさまはあたしの事、『お前様』とか、『娘』とか呼んじゃうし………… 」
「なら、早く名前を付けてあげないといけないね」
思わず出た言葉に返事が有る等と、彼女は思っていなかった。
ビクッと彼女の身体が揺れた。
「あ、ごめん。ノックしたんだけど聞こえてなかったようだね」
優しい声音に彼女は、今一度、驚いて、顔を上げた。
そして、お互いに固まった。
お互い、違う意味で。