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神は現で夢を見る
第2章 漆黒の乙女と薬師
─── 何だろう、この人は。女性? 男性? 解んないや。でも……綺麗な人 ───
─── 凪…………。な訳無いのにな。何て似てるんだろう ───
「凪………… 」
思わず、口を付いて出た言葉。
海が発した囁くような言葉は、真っ直ぐ少女に届いて、心の奥底に突き刺さった。
「それって…………、あたしのなま、え? 」
胸がキュッと苦しくなった。
そう、心が、身体が感じた。
それは、あたしの名前なんだと、彼女は悟った。
「なぎ、凪…………。あたしの名前…… 」
彼女が噛み締めるように呟く言葉を、遮る声があった。
「……ごめん、それは君の名前じゃ無い。君には別の名前を付けてあげるから、」
「いいえ! あたしは凪ですっ!! なぎなのっ……所在の無かったあたしの心がしっくりと収まったの」
真剣そのものだった。
所在なげで、虚ろだった少女の瞳。
深い虚の底を覗いたような錯覚を覚えた。
そう、海は彼女の虚ろに気付いていた。
「お願いします。凪と…………、凪の名を名乗らせて下さい」
少女は、そう懇願すると衣佇まいを正して、深くお辞儀をしてのけた。
その姿は、海の愛した凪その物であった。