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資料室の恋人
第8章 噂の先生
ふと、昼間の学食での佐倉が頭に浮かぶ。
女子学生に囲まれて微笑んでいた。いつもだと直也が言っていたっけ。
「いえ、何でもありません。やっぱりやめておきます」
『…会いたいって言ってくれると思ったのに』
「お仕事の邪魔したくないです。それに、私が先生をひとりじめしたら他の子に悪いと思って」
電話越しに佐倉の雰囲気が変わるのが分かった。
『なにそれ』
「休み中…そうじゃなくても、先生に会いたいと思う子はきっとたくさんいるでしょうから」
『…俺の気持ちはどうでもいいんだね』
そう言われて、言葉が口から出る前に通話が切れた。ツーツーと聞き慣れた音がしている。
電話をくれて、声が聞けて嬉しかったのに。学食で女子学生に囲まれていた佐倉を思い出して、胸がもやもやした。本当は会いたいと言いたかったのに。
「あ〜〜〜〜〜ぁ…もう!」
ベッドに携帯電話を投げつける。
「…なんであんなこと言っちゃったんだろう」
自信が無い。
佐倉を囲んでいた女子学生達を思い出すたび、想われているという自信が無くなっていく。
夏の長期休みまで、あと5日。