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資料室の恋人
第9章 車窓の花火


「航平せんぱーい!こっちでーす!」

聞き覚えのある声に振り返ると、後輩の木村明里がこれもまた後輩の高橋直也とこちらに手を振っている。
航平は人混みを通り抜けて2人のもとへ辿り着くと、きらきらと笑顔を作って言った。

「今日は誘ってくれてありがと!やっぱり人多いね」
「遠くからも結構人来るみたいですよ!屋台もいっぱい出てますし!直也、わたあめ買ってよね!」
「わかったからあんまり騒ぐなよ、子供みたいで恥ずかしい」

子供ってなによーと頰を膨らませる明里は、淡い水色の浴衣に身を包んでいた。大判で赤い朝顔の模様が明里の雰囲気に似合っている。航平は2人のやり取りを見ながら微笑んだ。
この2人はいつまで友達なんだろう。そう思うとなんだか面白くなって笑ってしまう。

すると明里が、あ!と言って手招きをし始める。

「ひーよりー!こっちこっち〜!」

明里が手招きする方へ顔を向けると、人混みの向こうに三木日和が見えた。浴衣の袂を揺らしながら小走りでこちらへ向かってくる彼女の姿を見て、航平はどきりと胸が鳴るのを感じた。


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