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資料室の恋人
第9章 車窓の花火
「もー遅いよ日和ー!」
「ご、ごめん…人が多くてなかなか前に進めなくて…」
乱れた前髪を直しながら、少し困ったようににこりと笑う日和。日和の浴衣は、紺色の地に向日葵があしらわれいる。帯と鼻緒の朱色が和風で落ち着きのある雰囲気にしていた。普段は下ろしていることが多いロングヘアが後ろでまとめられ、うなじの後れ毛が色気を漂わせている。
心の中で、イイ!とガッツポーズする航平だったが、平然を装いながらにこりと笑う。
「こんばんは、日和ちゃん。浴衣似合ってるね」
「こんばんは…いえ、そんな…すみません、待たせてしまって」
「ううん、待ってないよ!俺も今来たところだから」
ぺこりと頭を下げて申し訳なさそうにする日和にまた笑いかける。
「じゃあ全員揃ったし、花火上がるまで屋台回りましょー!」
明里が拳を上にあげて言うと、直也の腕を引っ張って先へ行ってしまう。