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資料室の恋人
第1章 いつもの場所

金曜日。

毎週やって来るその日は、日和(ひより)にとって好きな人に会える特別な日だった。

大学の午後の授業を終えると、決まって資料室へ行く。講義室のあるA塔から、資料室のあるC塔までは普通に歩いて3分くらいだ。

C塔までの間、本当は走りたい気持ちを抑えて、たっぷり3分かけて歩く。

資料室はもともと図書室だったが、A塔に隣接した新しい図書室が建てられてからは、資料室となり特に貸出の少ない本や専門書の倉庫の様になっていて、その都度鍵を借りなければ普段は閉められている。

金曜日のこの時間は、休日前ということもあってか、資料室には誰も来ない。もっとも、金曜日でなくても利用する人間はあまりいないのだが。

日和は資料室の重い扉をゆっくり開ける。室内に入る瞬間の何とも言えない緊張は、通い始めてもう1年になるのに消えてくれない。
緊張してる顔を見られるのは嫌だから、入ってすぐは見渡さないのが自分の中のルールになっていた。


といっても、日和の他に1人しか居ないのだけど。






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