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資料室の恋人
第2章 C棟とエッフェル塔
はい、と渡されたメモ用紙にはアドレスと番号が書かれていた。
「予定が入ったりしたら、気軽にメールしてよ。今日みたいに走らなくていいように」
「…走ってません」
呟きながらメモを受け取ると、佐倉がくすりと笑って、帰ろうかと言った。
佐倉と別れ、また自宅への坂をひたすら登る。
佐倉にも家まで送ると言われたが、すぐそこなので大丈夫ですと断った。
日和はトレンチコートのポケットから渡されたメモ用紙を出すと、書かれたアルファベットや数字をぼんやりと見つめた。
まさか、先生のプライベートな連絡先を知る事になるとは…。
数分前の出来事が思い出される。
本を準備してくれていたり…顔を近づけられたり…。
そういう事されると、もっと好きになっちゃうんだよなぁ。
朝とは違う、ひんやりとした風が吹く。
口の中には、チョコレートの甘さが微かに残っていた。