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資料室の恋人
第3章 出さないメール
しばらく金縛りにあったかのように固まっていると、自転車に乗った少年が「好きだってぇ〜!ヒューヒュー!」と言いながら、日和の横を走り抜けて行った。どこぞの少年のおかげで我に返った日和は、冷静を装って信号を確認すると横断歩道を渡った。
徐々に思考回路が正常に機能し始めると、日和の頭に言葉が浮かぶ。
日和ちゃんが好きなんだ
「えーーーーーっ!!??」
思い出した日和は、赤らむ頰を両手で覆うとその場にしゃがみ込んだ。
アスファルトの一粒一粒を凝視しながら、思い出しては混乱し、何度も同じことを呟いて、たまに、あー!とか、わー!とか叫ぶ。
今度、会う時にどんな顔して会えばいいか分からない。あんなふうに言われたら、変に意識してしまうではないか。
「はぁ…」
日和はため息を吐くと、立ち上がって歩き出した。
好きな人は、成就することのない人。
気持ちを断ち切って、次に進むのもいいかもしれない。
そう思いながらも、金曜日が待ち遠しい日和だった。