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資料室の恋人
第7章 味噌汁と卵焼きと金平とパスタと、君
カーテンから差し込む陽の光で目が覚める。外は久しぶりに晴れているようだ。
寝返りをうって転がると、隣で寝ていたはずの彼女がいないことに気がついた。
佐倉は伸びをすると、寝室を出る。リビングに入ると、日和がキッチンで何か作っていた。いい匂いがして胃が空っぽだと自覚する。
「あ…おはようございます。すみません、勝手に」
「おはよう。ううん、自由に使って」
皿には卵焼き、鍋には味噌汁が、それぞれ白い湯気を立てている。
「美味しそう」
「簡単なものですけど…。あ、エプロンも勝手に借りてしまいました」
その言葉に日和を見ると、だぼだぼのシャツの上からエプロンをしている。シャツは昨晩、シャワーを浴びた後にとりあえずと言って彼女に渡したものだ。小柄な彼女には大きすぎて肩は落ちて、裾は太ももまである。エプロンから白い脚がすらりと出ていた。佐倉はにんまりと微笑む。
「変な目で見ないでください…」
「いい眺めです」
味噌汁を器に移している彼女を後ろから抱きしめる。
「ちょ、危ないですよ」
やめて下さい、とは言わなくなったなと心の中で呟くと、彼女のつむじの匂いを嗅いだ。
「なっ何してるんですか…っ!」
「同じシャンプーの匂い」
「……」
彼女は黙って手を動かし始める。ここからだと見えないが、顔は赤いはずだ。