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資料室の恋人
第7章 味噌汁と卵焼きと金平とパスタと、君
ランチョンマットの上に、味噌汁と卵焼き、にんじんの金平が並べられる。最後につやつやとした白米が置かれた。
「わー…朝ごはんだ」
思わず言葉が出た。こんなにちゃんとした朝食はもう何年も食べていない。
「冷めないうちにどうぞ。口に合うかわかりませんけど…」
「いただきまーす」
味噌汁を一口飲むと、すっと体の芯が温かくなる。
「味薄くないですか?」
「美味しい…料理上手なんだね」
「いえ、そんなことないです」
大げさです、と言いたげに彼女も味噌汁をすすった。本当は嬉しいくせに。
「今更なんだけど、昨日泊まって大丈夫だった?お家の人とか何か言われたりしない?」
本当に今更だ。泊めるだけではなく、あんなこともしたし、あんな姿も見た。本音はいつまででも泊まっていけばいいと思うのだが、そうはいかない。
「大丈夫です。友達の家に泊まるからって連絡はしておいたので」
こういう場合は、いつの時代も"友達"が使われる。特に女の子は。
「じゃあ、これ食べたら送っていくよ」
「あ…予定があるんですか?」
「ううん、特に無いけど。どうして?」
言って。
今頭の中で考えているであろう言葉が聞きたい。
「…今日は休みだし、まだ…」
「まだ?」
もうちょっと。
「…一緒に居たらダメですか?」
そう、それ。それが聞きたかった!
「いいよ、俺も一緒に居たいから」
ほっとしたように笑う彼女。
好きな子にちょっとした意地悪をしたくなるのは、いつの時代も同じだ。特に男の場合は。