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資料室の恋人
第1章 いつもの場所
「え?え?え?」
「あはは、面白い子だね」
笑う新任講師を無視して、日和は論文の題名の下に記された名前を見る。“佐倉 恭介”とある。
「サクラ キョウスケ…?え、これ先生ですか!?」
「うん、そう」
新任講師は、はい、と手を挙げた。
「大学院の時に書いたやつかな」
「え!?」
「そんなに驚かなくても。みんな書くでしょ」
また笑われる。
この目の前にいる人間が書いていたとは。
"…当たり前みたいな事だけど、心理的な理由とか書かれていて面白かったです。なんかカラオケ行きたくなっちゃいます"
さっき自分が言った言葉を思い出して恥ずかしくなる。
ちょっと読んだだけなのに、分かったようなことを言ってしまった。やってしまった…
「す、すみませんでした…知ったようなこと言って」
「ううん、そんなのいいよ。感想聞けたし面白いって言ってもらえて嬉しかった」
日和はすみませんと呟いて頭を下げる。
居心地が悪くなったのでもう帰ろうと、バッグ手に取った。