この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
サキュバスちゃんの純情《長編》
第4章 過日の果実

「……精神的な?」
「水森曰く、『絵の女を神格化しすぎていて、彼女以外の裸では勃起できない』んだと。実際、付き合っていた女の裸を前にしても、役に立たなかった」
一人でならイケるのに、と湯川先生は呟く。
まぁ、でも、それも絵の中の私を想像しながらヤッていたんでしょうね。とは、さすがに突っ込めない。
……突っ込めない……まさに。
「あかりは、その……俺と別れる?」
それは湯川先生が一番心配していたことだ。私が別れを切り出すのではないか、と。
「何で?」
「気持ち悪くない?」
「水森さんに気持ち悪いって言われたの?」
「……色々、ね」
「あぁ、元カノ?」
押し黙った湯川先生の態度から、図星だとわかる。勃起不全を気持ち悪いなんて言われたら、それは傷つく。女性不信になっても仕方がないくらいの、酷い言葉だ。
だから、女性を遠ざけて、名医と呼ばれるほどにまで仕事に打ち込んだのだろうと容易に想像がつく。
「望」
湯川先生を見上げる。泣き出しそうな彼の目に、私がぼんやり映る。
「私とセックスをしてくれる限りは、別れないから安心して」
「……する。するよ、いくつになっても!」
「静かに。声が大きい」
「ごめん……」
勃起不全でも、私とセックスしている間は勃つのだし、射精できるのだから、問題はない。今のところ、量も回数も多いくらいだし。先生が衰えるのは、もう少し先の話だろう。
「でも、結婚はしないよ」
「十二年後でも?」
「うん」
「そっか……」
そんなはっきり落胆しなくても。

