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サキュバスちゃんの純情《長編》
第4章 過日の果実

 狂っていた。
 何もかもが、狂っていた。
 水森貴一が私を抱く回数が増え、叡心先生の心が蝕まれ、私の体と心が真っ黒に塗り潰されていく――。
 そんな、思い出したくもない日々の記憶が一瞬で蘇る。

 佐々木先輩。私は、これ以上の「悲劇」を知りません。辛すぎるのに、忘れられない記憶です。

「……日記に、書いてあるのでは?」
「あくまでも水森貴一の日記ですから。あなたと村上叡心の心境は、そこからはわかりません」
「お話ししたくありません」
「まぁ、そうでしょうね」

 ならば、言わないで欲しい。聞かないで欲しい。私は思い出したくもないのだから。
 水森さんと話しているだけで、腹が立ってくる。それが彼の目論見なら、成功だ。私は腹立たしくて仕方ない。

「……すみません。怒らせてしまいましたね」
「そうですね」
「まぁ、そのあたりの事情はそこまで知る必要はないので、僕としては構わないのですが……月野あかりさんは、精液を主食とする生物で間違いありませんね?」

 興味がないなら、ほんと、聞かないで欲しい。いちいち腹の立つ言い方をする人だ。
 体の震えが少しずつおさまってくる。怒りはまだおさまらないけれど。

「……そうですね、そうなりますね」
「何日に何回摂取しないと生きられないのでしょう?」
「週に一度くらいで大丈夫そうですけど」
「精液は何cc必要ですか?」
「一回でも十分ですが、多いほうが腹持ちはいいです」
「経口摂取ですか? それとも経膣で?」
「……両方です」

 なに、これ。なに、この尋問みたいなの。
 恥ずかしいとか通り越して、ちょっと気持ち悪いんだけど!

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