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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

 イチゴのショートケーキはイチゴがふんだんに使われていて、何とも贅沢だ。無花果のタルトは甘すぎなくて、口当たりも良い。レアチーズケーキもベイクドチーズケーキも、美味しい。

「クレームブリュレは目の前で焦がしてくれますよ」
「わ、それはいいですね」
「抹茶プリンも美味しかったです」
「それは是非取りに行かなければ!」

 幸せだ。いやぁ、本当に幸せだ。
 本当は荒木さんと一緒に来たかったけれど、水森さんもなかなか甘いものが好きなようで、彼が「美味しい」と言うものにハズレがない。いい舌をしている。
 舌は肥えているようなのに、体型はスリム。筋肉質ではない。中肉中背というやつだ。脱がしたらどんな体だろう。引き締まっているといいけど、たるんでいても構わない。
 ……まぁ、寝ないけど。

「今日はお休みですか?」
「休みを取りました。水森先生は?」
「水森でいいですよ。もともと木曜日は休診日なんです」

 なるほど。だから、湯川先生は木曜日のチケットを準備したのか。甘いもの好きの彼なら必ず行くだろうと予測して。

「お仕事は何を?」
「派遣社員です。営業補佐をしています」
「ストレスはありますか?」
「まぁ、多少は」

 荒木さんと日向さんのこととか? まぁ、あれは本当に瑣末なストレスでしかないけれど。
 水森さんは洋ナシのタルトを食べながら質問を続けてくる。
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