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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

「どうしたの、あかり。急に会いたいだなんて。今日は講義が昼までだったし、健吾もいないから良かったけど――っ、わ」
玄関を開けてくれた翔吾くんに抱きついて、唇を重ねる。海の名前のついた香水がほのかに香る。パンプスをポイと落として、翔吾くんに体を預ける。
「わ、わ、倒れる、倒れるよ、あかり」
「今すぐここでして」
「あかり?」
「翔吾くん、今すぐ私を抱いて」
今すぐここで咥えさせて、とはさすがに言えない。
翔吾くんは「わかった、わかったから」と私をなだめながら、廊下を上手に歩いて部屋へと導いてくれる。私は彼にぶら下がったままだ。
「何かあったの?」
「イヤなことがあって」
「そっか。それで俺のとこに来てくれたの?」
「迷惑だった?」
「まさか」
部屋のドアを閉め、翔吾くんはぎゅうと私を抱きしめる。何度もキスをしながら、少しずつベッドに近づいていく。
翔吾くんの部屋は高層マンションの一室にある。お父様が会社の社長、お母様が資産家の娘、翔吾くんはお金持ちのボンボンだ。御曹司と言ったほうが良いだろうか。愛情よりお金を与えられて成長したのが、翔吾くんだ。
私の給料ではとうてい住むことができない部屋で、翔吾くんは双子の弟さんと暮らしている。弟さんと鉢合わせたくなかったから、翔吾くんの部屋で会いたくはなかったのだけれど……今日は、今日だけは、見逃して欲しい。

