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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

「きみ、いい匂いがするねぇ! 俺とキスする? してくれたら、返してあ・げ・るー!」

 このクソ酔っ払い!
 足を踏むくらいなら許されるだろうかと、ちょっと足の位置を確認したときだ。

「はい、先輩、セクハラでアウト」

 スマートフォンで動画を撮りながら、男性が歩いてきた。その後ろには、鬼の形相の年配の男性がいる。上司だろうか。

「証拠もありますから、次回の会議で出しますね。いいですよね、部長」
「もちろん。サキタさん、うちの社員が申し訳ないことをしてしまいました! 非礼についてはまた後日お詫びしますので!」
「ぶ、ぶちょー!?」
「はい、先輩、彼女のスマホ、返してもらいますね」

 流れるような連携に、慣れているんだなと納得する。酔っ払いは部長に引きずられていく。

「こーみーやーまー!! お前、今日という今日は許さんぞー!! 他の取引先の女子社員もいるというのに、何たる体たらく! お前それでも……」
「はい、スマホ、お返しします」
「あ、ありがとうございます」

 遠ざかっていく二人を見送り、後輩さんからスマートフォンを受け取ってホッとする。傷もなくて良かった。
 見ると、通知ランプが点滅している。誰かからメッセージでも来たのだろうか。

「――失礼ですが」

 後輩さんを見上げて、あれ、と思う。あれ。どこかで見たことが、ある?

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