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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 妹尾さんが持ってきてくれたのは、焼きそばだ。ありがたく、もらおう。

「……紅しょうが、苦手ですか?」
「あ、ちょっと苦手です」

 よけていた紅しょうがを見られて、苦笑する。刺激物系は少し苦手。たこ焼きやお好み焼きの生地に入っている小さなものなら食べられるのだけど。

 ドン、と音がして、まだ薄い宵の空に真っ赤な花が咲く。
 始まった、みたいだ。

 そこかしこで酔っ払いの歓声があがる。出来上がっている人は多そうだ。
 近すぎず、遠すぎない距離で、花火大会が始まった。

 赤から緑へ変わる花火。
 形のある花火。
 柳のような尾を引いて長く空に留まる花火。

 昔は、こんなに綺麗なものが夜空を彩るなんて思わなかった。夜空を見上げることすら、しなかった。地面ばかり、落ちているものばかり、見ていた。

 なんて、裕福な時代になったのだろう。

「……綺麗ですね」
「とても」

 日は沈み、闇の中に色とりどりの花が浮かぶ。珍しい花火が咲くたび、歓声があがり、拍手が起きる。
 荒木さんも、日向さんと一緒に見ているだろうか。日向さんに、あの優しい笑顔を見せているのだろうか。
 あぁ、それは、嫌だな。見なくて、いいや。

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