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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花
「それとも、トイレでヤルの? 広い会議室でヤリたかったけど、まぁ、別に、どこでもいいか」
「……っ!?」
「ヤレるなら」
カランコロンと下駄が鳴る。
女子トイレに、入ってきた――!?
巾着を握りしめて、個室の奥で震える。冷房が切られていて暑いはずなのに、背筋は凍るかのように冷えている。
「ミーヤちゃん?」
確かに、精液は生きていくために必要で、なくてはならないものだけど、食事に――セックスに、お互いの合意は必要で……それがないと、濡れないし、痛いし、怪我をするだけ。
強姦は――最低最悪の食事方法だ。
「ミヤちゃん。俺、溜まってんの」
声が、ドアのすぐ向こうから聞こえる。ねっとりと、まとわりついてくるような、声。
「昔みたいにさぁ、抜いてよ」
見動きができない。助けを呼ぶこともできない。私は、なんて、非力なんだろう――。
「ねぇ、美也子」
ガシャン、と鍵が揺れた。体が震え、声にならない悲鳴が、喉に張り付く。
や、やだ、来ないで! 来ないで!
二度、三度、ガシャガシャとドアが揺れて――。
「ヤラせろよ」
ドアの上、両手と、ニヤリと笑う妹尾さんの顔が見えた。窓の外の花火が映って、ドアによじ登った彼の顔を青く染める。
「美也子、見ぃつけた」
下卑た笑みに、私はただ、助けを求める。
誰か……誰か……荒木さん、助けて――!