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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

「やっだ、妹尾さん、何、してんですか!?」
「妹尾さん、ここ男子トイレじゃありませんよ! 酔ってるんですかぁ?」

 突然、二人の女子社員の声が聞こえた。それは、私にとって、救いの声だ。

「部長が探していましたよぉ?」
「そうそう、サキタの営業さんと話すみたいでー」
「……へぇ。俺、こんな酔ってんのに、大丈夫かなぁ」

 ガシャンと音を立て、ドアから降りて、妹尾さんは女子トイレの出入り口へ向かっている。
 さすがに、ここでさらに迫ってくることはしないみたいだ。

「早く行って、商談頑張ってくださいね!」
「お、おう。……また、な」

 また、な。
 それは、私に向けられた言葉だとすぐにわかった。イトイが取引先である以上、サキタに彼が出入りすることもあるだろう。そうなったら、また体の関係を迫られるに違いない。
 ……最悪だ。辞めるしか、ないのか?

「なぁにが、またな、よ! 撮れた?」
「バッチリ。サキタの月野さん、大丈夫ですか?」
「助けが遅くなって、すみません!」

 ……へ? 私の、名前?

 ドキドキしながら鍵を開けると、女子社員二名が心配そうな顔をして、立っていた。一人はビデオカメラを構えている。

「うちの社員が、本当にすみませんでした」
「あの人、酒癖が本当に悪くて……あ、一部始終を撮らせてもらいましたが、会社に提出するときは加工します」
「後日、部長から正式な謝罪で伺います。その際、妹尾の処分を通知いたしますね」
「あ、あの……」

 わけがわからなくて、二人の顔を見比べる。二人は社員証を示し、さらに名刺を手渡してくれた。

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