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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

 さて、どこでナンパを待とうか。
 あんなことがあっても、お腹は空く。男の人が怖くても、空腹は待ってくれない。それとこれとは別問題なのだ。

 駅までゆっくり歩く。やはり、カップルが多い。友達同士も多い。一人だけの男性はいない。当たり前か。
 一人、いや、二人……二人連れの男性ならまぁ何とか相手にできるだろう。三人は、応相談、だなぁ。
 そういえば、メッセージの通知があったんだった。誰だろう? 誰か会えるようになったなら、嬉しいのだけど。

「あれ、翔吾くん?」

「さくらい」と表示されたメッセージは、ただ一言。

『たすけて』

 ……たすけて? 助けて? 助けて!?
 さっきまで私もそう思っていたのに、慌てて、そのメッセージの無料通話ボタンを押す。何回かのコールのあと、繋がる。

「翔吾くん? どうしたの? 今どこ?」
『……家……うっ』
「翔吾くん? 翔吾くん!?」

 花火のせいか、混雑しているせいか、声が聞き取りづらい。でも、マンションにいるなら、ここから遠くはない。湘南だったら、さすがに遠いけど。

「あぁ、もう!」

 助けて、なんて言われたら、助けにいかないわけにはいかないでしょ、もう!

 世話の焼けるセフレだなぁ、と思いながら、まさか誘拐とかじゃないよね、と嫌な考えを振り払う。何か事件に巻き込まれたとかじゃないといいんだけど。
 そんなドラマみたいなことを考えながら、カラコロと下駄を鳴らし、駅へと向かうのだ。

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