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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花
「あんたは、怖い。なんで、こんなに、俺の中に入ってくるんだよ」
「……ん?」
「なんで、俺の心を、かき乱すんだよ」
強く抱きしめられる。怖いのに、そばにいて欲しい――それは、その気持ちは、とても矛盾している。
「なんで、俺、あんたのことが、こんなに」
こんなに?
「――気になるんだ?」
健吾くん、ちょっと待って。それは、まるで。
「気になるんだよ。翔吾と一緒にいても、いつの間にか目で追ってる。いつの間にか、あのファイルを開いてあんたの写真を見てる。翔吾のセ、ックス、フレンドだって、わかってるのに、なんでこんなに――」
健吾くん、ダメ。ダメだよ。それ以上は、やめておいたほうが。
健吾くんの体は震えている。背中を撫で、落ち着かせる。
「あかりさん、俺」
「健吾くん、その続きは、ダメ」
「俺、やっぱり、あんたのことが」
「ダメ。それ以上は聞けない」
その一言は、翔吾くんと健吾くん、そして私の関係を壊してしまう力を持っている。危うい言葉だ。
「……わかってる。困らせないから」
「じゃあ、離し」
「好きだ」
零れ落ちた言葉は、どこに消えていくのか。
どこにも留まらず、消えていって欲しいのに、こういうときに限って、胸のどこかに残る。重く残るのだ。