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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花
鍋に溶き卵を回し入れて、蓋をする。弱火にして、ふぅとため息をつく。
浴衣に帯に襦袢などはハンガーに吊るしてある。クリーニングに出して、涙と鼻水は綺麗にしてもらわないといけない。手洗いでもいいけど、クリーニングのほうが確実だ。
今、健吾くんが準備してくれていた長めのTシャツを着て、雑炊を作り終えたところだ。
「……いい匂い」
脱衣所から出てきた健吾くんは、Tシャツにトランクス。翔吾くんはボクサーパンツ派だから、間違えて履くことはなさそうだ。
「雑炊食べる?」
「……食べる。食べたい」
コンビニで買ってきたスポーツドリンクを冷蔵庫から出して、健吾くんに手渡す。「ありがと」と礼を言ってから受け取る健吾くんに、何だか不思議な気分になる。
素直だなぁ。
器によそって、ネギを散らす。うん、美味しそう。
「はい、どうぞ」
テーブルの対面に座って、私も雑炊を食べる。うん、美味しい。
熱いけど、冷房で冷えた部屋で食べるにはちょうどいい。
マンションの前の露店で鈴カステラも買ってしまった。これはまた小腹が空いたら、にしよう。
「……美味しい」
「まあまあ、以上の感想だね?」
「この間のご飯、美味しかったよ。味噌汁も玉子焼きも美味しかった」
す、素直すぎて、調子が狂うんですけど!
目を丸くしたまま健吾くんを見つめると、フッと視線を外される。照れているみたいだ。
「翔吾の前であかりさんを褒めたくない」
「そういう、もの?」
「そういうもの」
男心はわからないなぁ。誰か教えてくれるといいんだけど。