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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

「俺を、助けてくれて、ありがとう」

 震える声に、応えるべきか、白を切るべきか。認めるか、誤魔化すか。

「ありがとう、あかり。本当に、ありがとう……」

 素直な健吾くんの気持ちを、無下にできるわけ、ないじゃないの。私にはできない。

「どう、いたしまして」

 認めたとしても、藍川に「ロリコン」や「児童買春」のレッテルが貼られるだけだ。
 今私は二十五歳。十年前は十五歳……まぁ、何とか誤魔化せるギリギリかな。ギリギリだなぁ。

「あかり、本当に、ありがとう。あかりは命の恩人だ」

 健吾くんの手の甲にキスをして、思う。

 ……今、あのとき助けた男の子の腕の中にいるなんて、男の子の童貞をもらってしまうなんて、本当に想像すらしていなかった。
 奇妙な巡り合わせも、あるんだなぁ。

 あぁ、そうか。
 これこそ、佐々木先輩の言う「抗いようのない運命」なのかもしれないなぁ。

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