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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花
「あかりさん、ご飯とパンはどっちがいい?」
「じゃあ、パン」
「わかった。適当に作るけどいいだろ?」
「うん、おまかせ、します」
驚いた。
これは、初めてのパターンである。セフレが朝食を作ってくれるなんて、初めてだ。宮野さんでさえ、コーヒーを淹れてくれるだけだったから。
Tシャツを着て、ベッドに座る。コンビニのショーツはやっぱりあまり好きではない。けれど、仕方ない。ノーパンよりはマシだ。
充電していたスマートフォンを見ると、昨夜荒木さんからメッセージが来ていたようだ。
『無事に家に着いた?』
家、ではないけど、無事です。妹尾さんからは無事に逃げられました。荒木さんは日向さんから無事に逃げられたのでしょうか? 気になります。
けれど、そのまま書くわけにはいかないから、少しぼかす。
『ご心配ありがとうございます。無事に家に着きました。荒木さんも無事に帰宅できましたか? それにしても、イトイの営業部は恐ろしかったです。助けてくださってありがとうございました』
荒木さんには妹尾さんが元セフレだと知られるわけにはいかない。初対面の人に言い寄られた、で押し通そう。「ミヤちゃん」は勘違いなのだ。
荒木さんも、日向さんにお持ち帰りされていないといいんだけど、なぁ。そればかりは、わからない。週明けに「付き合うことになりました」なんて報告されたら、私、派遣期限の年末まで耐えられるかわからない。
溜め息を吐き出すと、荒木さん以外からもメッセージが来ているのに気づいた。名前を確認して、戸惑う。
……翔吾くん、だ。
恐る恐るメッセージを読む、と。
『健吾の件、ありがとう。何秒だった?』
筆おろし、バレバレ……!
一瞬、頭の中が真っ白になる。
私たちのことをいつ知ったのか、何で騎乗位のことを知っているのか、双子だからなのか、それは本当によくわからない。
けれど、まぁ、仕方ない。翔吾くんも同意の上の関係だ。とても歪(いびつ)な、三角関係。
『おはよう。七秒だったよ』
メッセージを送ったら、すぐに既読になって返信が来る。
『七秒! 勝った! しばらく健吾の相手してやって。俺の相手は別荘でたくさんお願いするから』
『わかった。サーフィン気をつけてね』
『うん、ありがと』