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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

「男が女に服をプレゼントするのは、脱がせたいか、着たまま犯したいかのどちらかだ」というのが翔吾くんの口癖だったけれど、健吾くんが選んで買ってきたのは、とても無難なものだった。
 脱がせたい・犯したい、という邪な感情は一切排除された、「彼女に着させたい服」だったのだ。

「健吾くん、これ、ショップの店員さんに勧められたものを買ったでしょ?」

 ネイビーブルーのフリルブラウスに、白の膝下シフォンスカート。白のレーシーな靴下に、黒のスニーカー。
 サイズはピッタリ。もちろん、先に教えたからだ。翔吾くんならまだしも、健吾くんにサイズを想像する力はない。
 健吾くんの部屋で着替えたあと、リビングでくるりと一回転して健吾くんに見せてみると、むぎゅと抱きつかれる。

「かわいい、あかりさん」
「……健吾くんが選んだの?」
「まさか。あかりさんの写真見せて、店員にお任せした。ダメだった?」
「ううん、いいと思う」

 翔吾くんは暖色を好むけど、夏はやっぱり寒色も季節感があっていいと思う。翔吾くんが絶対に選びそうにないコーディネートをチョイスしてくるあたり、いや、チョイスしてもらう、の間違いだけど、双子なのに全然違うんだなぁと笑ってしまう。

 それにしても、写真……て、興信所の人が隠し撮りしたものだろうか。まさか寝顔とか、撮られていないよね?
 訝しげな視線を健吾くんに向けると、ちょっとしょんぼりしていたので、「かわいいね、ありがとう!」とテンション高めに微笑んでおく。健吾くんがホッとしたのを見て、初めて女物の服を買ったのだから緊張したんだろうなぁと申し訳ない気持ちになる。

 でも……替えの服をここに置いておくのは、やっぱり気が進まない。合鍵にしても、化粧品にしても、男の人との繋がりはなるべく消しておきたいのだ。

「……脱がせたい」
「脱がせるの?」
「着たまま、してもいいかも」

 そこは、そっくりなんだね。似なくてもいいのに。
 苦笑した瞬間に唇を塞がれ、するりと腰が撫でられる。
 そのまま指は体のラインを上へとたどり、胸の柔らかさを堪能したあとで、襟元のボタンから外し始める。あらわになった鎖骨に唇が這い、胸の谷間に唾液が滑り落ちていく。

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