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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

「良かった……じゃあ、何かあったら私に言ってね。荒木くんは頼りになりそうでならないから」
何だろう、この違和感。
周りの派遣さんたちは皆「日向陽子は要注意人物」というような口調だったのに、今の彼女からはそんな悪い感じは受けない。これが演技なら、大したものだと思うけど、そうじゃない気がする。
佐々木先輩は、日向さんのことをどう評価していただろうか。先輩なら、日向さんのことを正当に評価してくれるはず。
「あ、あの、日向さん」
「はい」
「ご迷惑をおかけいたしまして、こちらこそ申し訳ありません」
ペコリ頭を下げると、日向さんは「月野さんは悪くないわよ」と朗らかに笑った。
「酔った勢いでセクハラするなんて、最低の男がすることよ! 月野さんには何の落ち度もないんだから、気に病まないで」
「はい、ありがとうございます」
それにしても、日向さんの荒木さんに対する「頼りない」が気にかかる。日向さんは荒木さんのすべてを受け入れているのだと思っていたけど、そうではないのだろうか。
「日向さんは、荒木さんを頼りないって思います?」
「え、むしろ、月野さんは荒木くんが頼りになると思う?」
質問返しされるとは思わなかった。
それは……まだそんなに荒木さんを知らないので……まぁ、でも、頼りになるとは、思わない、かな。
「月野さんの件だって、気づいた瞬間に自分が対処すれば良かったのに、わざわざイトイの人事の子に相談しに行ったのよ? 彼女たちがすぐ対応してくれたから良かったものの、そうじゃなかったら、どうするつもりだったのかしら、荒木くん」
あ、結構辛辣な評価だ。日向さんが荒木さんをそんなふうに思っているなんて、知らなかった。
頼りにならない男を私が支えようというような恋、なのだろうか。
それにはとても大きな覚悟と広い心が必要だ。叡心先生と一緒に生きると決めたときに、それは身に沁みてわかっている。

