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サキュバスちゃんの純情《長編》
第7章 傷にキス

先輩、それは「抗いようのない運命」だったのでしょうか。だとしたら、残酷すぎる。
「でも、いいこともあったのよ」
玉子焼きをトレードするのは、いつもの日課。私は自分で作る出汁の入った玉子焼きも、佐々木先輩の甘い玉子焼きも、どちらも好きだ。
「私を好きだって言ってくれる人がいて、その人が私と息子のそばにずっといてくれて……プロポーズ、されちゃった」
「!!」
思わず玉子焼きを落とすところだった。危なかった。
プロポーズ!? ですか!?
佐々木先輩、結婚するんですか!?
なんて、幸せな響きなんでしょう!
「歳下なんだけど、しっかりしているし、初めて会った割には息子も懐いたし……まぁ、これからなんだけど……そういうことも念頭に置いてみようかな、と」
「おめでとうございます!」
「やだ。まだ先の話よ。返事すらしていないわよ。もう少し、見極めなきゃね」
息子さんの写真を見せてくれたときと同じくらい、先輩が輝いて見える。少し照れている表情がかわいい。
「いくつ歳下なんですか?」
「二十九だから、四つ下かな」
「全然離れていないじゃないですか! もっと歳下かと思いました」
佐々木先輩なら、どんな人でも支えていけそうな気はするけど、やっぱり彼女を支えてあげてほしいなと思う。
頼り甲斐があって、強い人ではあるけれど、たぶん本当は脆い人だ。
そういうところに気づいてくれる男性であれば、本当に嬉しい。

