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サキュバスちゃんの純情《長編》
第7章 傷にキス
部屋にケントくんを招き入れ、冷房を入れて溜め息をつく。
「結構綺麗にしてあるじゃん」と笑う彼は、許可していないのにベッドに座っている。ソファも座布団もあるでしょ、と言いかけて飲み込む。これでは口うるさいおばちゃんになってしまう。
まぁ、十歳も離れていたら……いや、十歳どころじゃないから、私はおばあちゃんか。
テーブルに麦茶のグラスを置いて、服をしまってあるチェストを探る。ケントくんが着られそうなTシャツはあっただろうか。
「あかりちゃん」
「んー?」
ドン、と背中に軽い衝撃。よろめいたところで、ぐいと引き寄せられ、ベッドに正面から放り投げられる。うつ伏せでベッドにダイブさせられて、したたかに顔を打つ。痛い。
「ちょっと、なん――」
「大人しくしてて」
後ろ手に、ガチャリと金属音。少し冷たいそれは、シリコンの手錠。相馬さんが「プレゼント」と称して私にくれた例の試作品だ。
「……え? なに?」
「いいものがあったから、使わせてもらうよ。ね、なに、しよっか?」
「ケント、くん?」
「なに、って、決まってるよね。ご馳走が目の前にあるのに、あかりちゃんは我慢できる?」
ベッドの上、ケントくんから逃げようと足を使って移動していくけど、結局は壁際まで追い込まれる。
にじり寄ってくるケントくんは、相変わらず悪魔のような瞳で、私を見据えて、笑みを浮かべている。
何? 何なの? 何が起きているの?
「そんな怯えないでよ。ただセックスをして、お互い気持ち良くなるだけだから」
「なん、で……」
「失敗したんだよね、今夜は。食事にありつけると思ったのに、飲みすぎて寝ちゃってさ」
するり、ケントくんの指が私の足首をなぞる。
ただそれだけなのに、体中が粟立つ。健吾くんに散々抱かれて無理だと思っていたはずの体に、熱が灯る。