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サキュバスちゃんの純情《長編》
第7章 傷にキス

『お前はどこもかしこも綺麗だなァ。髪も顔も、体も、心も、汚いところなんて、ねえよ』

 体を売って生活をする汚れた私に、叡心先生は、ただ、綺麗だと言ってくれた。こんな私でも、綺麗だと。

『ミチ、夫婦(めおと)になるか』

 叡心先生の困ったような笑顔、ずっと忘れない。忘れられない。

『貧乏で苦労させるが、それでも俺ァお前と一緒に生きたい』

 差し出された手は、暖かかった。何があってもこの手は離すまい、そう誓った。

『歳を取ることなんざ怖くねェよ。歳を取ったとき、お前がそばにいないことのほうがつらい。苦しい。それくらい、惚れてる』

 嬉しかった。
 一緒に生きようと言ってくれたこと。
 そばにいてほしいと言ってくれたこと。

『ミチ』

 叡心先生、私……。

『お前は、生きて、幸せになれ』

 先生と一緒に生きて、幸せになりたかった。
 あなたのいない世界に、生きる意味はないの。生きる意味なんてなかったの。

『ミチ……幸せになれ……』

 先生、置いて行かないで。
 私も一緒に連れて行って。
 その手を、私に伸ばして。

『……生きて……幸せに……』

 先生! 行かないで!
 先生、お願い!

 私を一人にしないで!

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