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サキュバスちゃんの純情《長編》
第7章 傷にキス

「……痛い。ありがと、あかりちゃん」
「八つ当たりで、あんな酷いことしないで」
「うん、ごめん」
「強姦が、レイプが、私たちにとってどれだけしんどいことか、ケントくんは知っているはずでしょ?」
「うん、浅はかだった。ごめん……ごめんなさい」

 ベッドの上、ケントくんはしょんぼりとうなだれる。同じようにしょんぼりと小さくなった陰茎を見て、溜め息をつく。

「……私が妊娠しないのは、本当?」
「それは本当のことだよ」
「インキュバスってことは?」
「それも本当」
「私を愛してるっていうのは嘘よね?」
「……うん」

 素直でよろしい。
 まったく、もう。八つ当たりに私を巻き込まないで欲しい。

「シャワー浴びるけど、どうする?」
「……一緒に?」
「セックスはしないよ」
「大丈夫。僕も満腹だから……あ、うん、ご馳走様でした。すごく、美味しかった。気持ち良かった」

 絆されたわけじゃないけど。
 綺麗な顔の子にそんなふうに微笑まれて、キュンとしない人がいたら、すごいと思う。
 中身は性悪の強姦魔なのに。イケメンって、得だなぁ。

 でも、空腹時の私もそんな状態になってしまうのだから、同族として、理解はできる。
 飢えゆえに、誰かれ構わずセックスしたいという気持ちは痛いほどよくわかる。

 八つ当たりで無理やり、というのも翔吾くん相手にやったことがある。水森さんに初めて会ったときがそうだった。あれは完全に八つ当たりだった。
 私も、酷い女なのだ。

「……私も、気持ち良かった。ご馳走様」

 許したわけじゃない。信じているわけじゃない。
 でも、パァと顔を輝かせたケントくんを、私は、これ以上責められないと思うのだ。

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