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サキュバスちゃんの純情《長編》
第7章 傷にキス

「っ、あかり!」

 私の名前を呼ぶ切ない声のあと、ケントくんはキスをしたまま何度も身震いした。最奥に吐き出された精液は、少しずつ私の中が搾り取っていく。

 甘くて美味しい、媚薬。
 暴力的なまでの性欲を人間に与える私たちの体は、同族同士でさえ、愛を錯覚するほどの凶器となる。

 溺れちゃいけない。
 相性がいいのは、愛じゃない。
 セックスのあと、お互いを愛しいと思うのは、愛じゃない。

「あかり」

 繋がったまま、何度もキスをする。ケントくんの肉棒は、まだ硬さを保ったままだ。……まだ、足りない?

「やっぱり、パートナーになってよ、あかり」
「イヤ」
「なんで? 僕のことを真剣に怒ってくれたのは、あかりだけだよ。あかりが欲しい。あかりと一緒に生きたい」

 ケントくんの情熱的な言葉には悪いけれど、その言葉は、叡心先生の言葉には届かない。
 愛じゃない。
 愛がない。
 私が欲しいのは、叡心先生の言葉だけ。

「ごめん。私、夫のことが忘れられないの。ケントくんだって、そうでしょ?」
「……あかりは、ずるいね」

 ケントくんは切なげに苦笑して、キスを落とす。
 ただ一人の人。忘れられるわけがない。
 そんなこと、お互いが一番わかっている。
 だからこそ、傷を舐め合うだけの関係が一番適切なのだ。

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