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サキュバスちゃんの純情《長編》
第7章 傷にキス
「……水森さん」
「はい」
「私、インキュバスに会いました」
一瞬、目を見開いた水森さんは、「そうですか」と言いながら眼鏡を直す。そうは見えないけど、驚いたようだ。わかりづらい。
インキュバスに会った。それだけで、水森さんはすべてを理解する。
「セフレに加えたのですか?」
「まぁ、相性は悪くなかったので」
「相性どころか、性質的には最高の相手ではないですか?」
「おそらくは。でも、彼と生きたいとは思いませんでした」
ケントくんとはパートナーにならない。それは、彼との約束。
空腹のときは、それぞれ力を貸すけれど、それ以上の関係にはならない。そう決めた。
「村上叡心だけですか?」
「叡心先生だけです」
「これからも?」
「これからも」
……たぶん。
誰かが私と一緒に生きようとしてくれたとしても、私はどうしたって、叡心先生を想ってしまう。
叡心先生を想いながら他の誰かを愛する、そんな器用なことは、私にはできそうもない。
「いずれ湯川の前から姿を消すのですか?」
「はい」
「他のセフレの前からも?」
「そうやって、生きてきましたから」
だし巻きがなくなってしまった。鰯も美味しかったけど、お刺身も美味しい。エイヒレもお酒によく合う。やっぱり魚は好きだ。