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サキュバスちゃんの純情《長編》
第7章 傷にキス
「私に、魅力、なんてありませんよ」
「そうですか? 少なくとも、僕はあなたに興味がありますが」
「それは、ただの学術的な興味でしょう? サキュバスは、エサに困らないように、異性から魅力的に見えるようになっているんですよ? 湯川先生も、他の人も、私に騙されているだけなんです」
男の人に好かれるような仕草も、煽るような言動も行動も、エサにありつくための、精液を出してもらうための、処世術に過ぎない。
そこに魅力を感じたところで、それが私の本質というわけではない。
私の体に、外見に、仕草に、甘い匂いに、甘い体液に、みんな、騙されている。
みんながセックスをしたがるのは、ただの中毒症状なのだ。
「あかりさん、あなたは、本当に鈍感なんですね」
「だから」
「あなたへの好意を、騙されているだなんて言葉で片付けないほうがいい。それはセフレに失礼だ」
「でも、実際」
「あなたのセフレに聞いてみてください。私のどこが好きなのか、と。あなたの体だと答える人はいませんよ。断言します」
そんなこと、言われても。
なんで、セフレでもない水森さんが、そんなふうに、怒るの?
納得できないのに、素直に聞いてしまう自分が嫌だ。
水森さんの言葉から、プロポーズまでしてくれた湯川先生と、私を彼女にしたがる翔吾くんの顔がちらりと脳裏をかすめるのだ。
彼らの気持ちを、私は、受け入れていない。彼らの発言を、ただの気まぐれだと思い込もうとしているのは事実。
彼らの本心を、私は知らない。知ろうとしなかった。
だって、彼らの気持ちが本気なら――私は、彼らの前から姿を消さなければならないから。
「だから、あなたは残酷なんだ。自分の体は武器にするくせに、心は明け渡さない。男が一番欲するものを、あなたは絶対に渡さない。それが男を追い詰め、狂わせるのに、あなたは気づかない」
だから、私は。私は――。