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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

 翔吾くんは、どこだろう。どこにいるのだろう。
 私を探してくれているだろうか。それとも、探すことを諦めて一人で見て回っているだろうか。

 ――どうして、手を繋いでくれなかったんだろう。

 他のセフレさんなら許せたけど、健吾くんとセックスをした私を、本当は許せなかった? 私は、汚い? 穢らわしい? 触れたくなくなった? もう、抱きたくない? 精液を提供する価値がない?
 嫌なことばかり考えてしまう。

 宮野さんみたいに「結婚することになった」とハッキリ言われたら、納得した上できちんとお別れすることができるのに。
 翔吾くんの気持ちがわからない。

 彼は、私と別れたいのだろうか。

「ただいまタイムセール実施中です!」

 翔吾くんの姿を探しながら、さっきのお店の前にまた戻ってくる。Tシャツはまだ売れていない。ふらりと店内に入って、それを眺める。やっぱり、翔吾くんに似合いそう。

「あ、こちら、メンズだけじゃなくてレディースもありますよ!」

 頼んでもいないのに商品の説明をしてくれた店員さんの声に従って、ふらりとレディースのTシャツも見る。同じ色のもの、違う色のもの、結構種類は豊富だ。

 タイムセールで二割引になる赤と青のTシャツを長い列に並んで買って、店外に出る。冷房の効いた店内から出ると、一気に汗が噴き出る。
 買っちゃった……別れちゃうかもしれないのに。馬鹿みたい。

 少し歩いて、はぁと溜め息をつきながら、ぼんやり外の芝生を見つめる。
 小さい子どもたちが駆け回り、転んで泣いている様子を見て、「迷子センター……インフォメーション?」と思いつく。インフォメーションで翔吾くんを呼び出してもらえばいいんだ、と思いついて、慌ててパンフレットを開く。
 そして、総合案内所の文字を見つけた瞬間に、聞き覚えのある声が遠方から聞こえてきた。
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