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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「あかりー!」
「翔吾くん!? しょーごくーん!」

 パンフレットをぶんぶん振って、芝生の遊歩道を走る翔吾くんに合図を送る。翔吾くんは、人混みの中に私を見つけたらしく、慌ててこちらへ駆けてくる。私も同じ方向へ走り出す。

「あかり、ごめん!」
「翔吾くん、ごめん、はぐれちゃった!」

 炎天下の芝生の中、謝りながら合流する。

「ごめんね、あかり。はぐれたことに気づかなくて」
「私こそ、勝手にはぐれて、ごめんなさい」

 翔吾くんの首にも顔にも、大粒の汗。シャツも汗で濡れてべっとり貼り付いている。すごく探してくれたんだろうなと思って、一瞬でも「探すのを諦めたのでは」と思ってしまった自分を恥じる。

「あかり?」
「え、あ、何でもな」
「なんで、泣くの」

 日に焼けた優しい顔がぼやける。心配そうな顔が涙で歪む。

「なんかあった? 変な奴に絡まれた?」
「ちが」
「心細かった?」

 頷きながら、タオルハンカチで涙を拭く。
 不安だった。心細かった。翔吾くんに触れられないだけで、こんなにも動揺している私が恥ずかしい。

「あかり、もう大丈夫だから」
「ん、わかって、る」
「また冷たいものでも食べに行こ」

 翔吾くんが困ったように笑うのを、私は涙を浮かべて見上げる。

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