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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

「ひゃ!」
「っ、と」

 健吾くんを避けるためにソファから落ちそうになったところを、当の健吾くんが腕をぐいとつかんで引き寄せてくれた。おかげでソファから落ちずにすんだのだけれど。けれども。

「……け、んご、く」
「いい匂いだな、あんた」

 見慣れた顔であっても、初対面の人にノーブラノーパンTシャツ一枚で抱きしめられるのは、ちょっと、いや、かなり、恥ずかしい。しかも、髪の匂いまで嗅がれた!

「……あんた、顔がそっくりな姉かイトコいるか?」
「え?」
「……いや、いないなら、いいんだ。あんたにそっくりな人を知っていたから……」

 唐突な質問に面食らっていると、さらにぎゅうと強く抱きしめられる。ちょっと、痛い。
 こんなところ、翔吾くんに見られたら誤解されてしまう。
 誤解されて――彼がセフレじゃなくなってしまうのは、大変だ。死活問題だ。貴重な食料……食材……ご飯……とにかく精液が手に入れられなくなるのは困る。

「月野さん、あんた、翔吾の顔は好きだって言ったよな?」
「……え、うん」
「だったら、同じ顔の俺とでも寝られるだろ?」

 強く抱きしめられた上で、スルリと背中を撫でられる。その微妙な指の加減に、ぞくりと肌が粟立つ。
 腰を強く引き寄せられ、健吾くんの顔が近くなる。近いどころか。あと少しで、唇が触れてしまうくらいの距離だ。冷たい目が私を見下ろす。

「俺にもヤラせろよ」

 セックスをすること自体はイヤではない。イヤではないけれども。ねだられることと、強要されることは、違う。プレイとレイプくらい、違う。

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