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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

「健吾、何か失礼なこと言わなかった?」
「そんなことは、なかった、よ?」

 多少言われたけど、告げ口みたいなことをする必要性は感じられない。私自身、傷つけられたとは感じていないからだ。

「本当に?」
「うん。心配してくれてありがと」
「ん。あいつ、女の人を目の敵にしているようなところがあるから……何かあったら俺に言ってね」

 うん、と呟いて、手触りのいいベビードールランジェリーを手に思案する。
 パステルオレンジのブラジャーとショーツに、同じデザインのベビードール。ブラとショーツは身につけてみたけど、ベビードールは着たことがない。そもそも、ブラの上にベビードールを着ても良いのだろうか。よくわからないまま、手渡されたものを着用している状態だ。
 ベビードールにはリボンとレースがふんだんに使われていて、胸元から下の部分が開いているデザインはとてもかわいいけど、お腹は丸見えだし、そもそもの素材がめちゃくちゃ透けている。これは恥ずかしい。とても恥ずかしい。

「サイズ大丈夫?」
「うん、大丈夫。でも……本当に着るの?」
「着て」

 ベッドの上で私に背を向けたまま、翔吾くんは短く返事をする。ぜんぶ身につけるまで翔吾くんはこちらを向いてくれないようだ。
 もう、仕方がないなぁ、と覚悟して、頭からゆっくり着ると、思いの外、肌触りがとても良い。サラサラだ。サイズもピッタリ。かわいい。

「翔吾くんっ」

 照れ隠しに、ベッドの上の翔吾くんに背中から抱きつく。首に手を巻きつけて、翔吾くんをぎゅうと抱きしめる。

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