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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

「あかり、見せてよ」
「やだ、恥ずかしい」
「見せて」
振り向いた翔吾くんに強く手を引かれ、ベッドに倒れ込む。手首を耳の横あたりで押さえつけられ、私を見下ろす翔吾くんの目が嬉しそうに細められる。
「……かわいい」
「そ、そうかな?」
「オレンジ、よく似合うね。綺麗だよ、あかり」
唇が優しく触れる。頬に、額に、まぶたに、鼻に、唇に。ついばまれているかのようなキスは、とてもくすぐったい。でも、嫌いではない。
翔吾くんは私を組み敷いたまま、ペロリと舌なめずりをした。
「食べちゃいたい」
舌が挿れられ、翔吾くんの重みで下半身も身動きが取れなくなる。太腿に押しつけられた硬いものが、じわじわと上へと進んでくる。
「あかり、かわいい。好きだよ」
太くて温い翔吾くんの舌が、私の舌を絡め取る。ちゅうと唾液が吸い上げられて、翔吾くんの喉が鳴る。歯列をなぞり、口蓋をつつき、翔吾くんは楽しそうに口内を蹂躙していく。
「あかり」
「んん?」
唇を離して、今度はコツンと額を合わせて。翔吾くんの目が熱っぽく潤んでいる。何か言いたそうな、目。
まずい、と思ったときには、遅かった。翔吾くんの唇を塞ぐより先に言葉が落ちてくる。
「俺と付き合って、あかり」
「しょーご、く」
「俺だけのものになってよ、あかり」
セックスするだけの友達だって言っているのに。そういう約束なのに。体だけの関係で納得してくれていたのに。
なんで。
どうして。
心まで、求められるんだろう。
「愛しているんだ、あかり」
どんなに強い深い愛の言葉でも、受け取ることはできない。
ごめんね、翔吾くん。
私、心はいらないの。本当に、体だけで十分なの。

