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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

「翔吾」
「……わかってる。困らせてごめん。もう言わないから」
いきなり熱が引くわけがない。翔吾くんの目は充血したままだ。手だって汗ばんでいる。
「俺とあかりはセフレだから、心まで欲しがっちゃいけないよな」
「……うん」
「でも、俺、あかりのこと好きだよ。本当に、好き。本当は、誰にも渡したくない」
「……うん」
「だから、今日だけ、キスマークつけたい」
それが、翔吾くんの最大の願望というわけではないだろう。きっと彼なりの最大限の譲歩、妥協点なのだ。
所有しているという証を刻みたい、その気持ちは理解できない。できないけど。
望むものを与えてあげたいという気持ちはある。
「私のこと、食べちゃいたいんでしょ?」
「……え」
「だったら、キスマークでも歯型でも、つけていいよ」
それで翔吾くんが満足して、気持ち良くなってくれるなら、構わない。土曜日に会う宮野さんは、そういうの気にしない人だから問題はない。
「だから、俺と心中して」なんて言われて刃先を向けられるより、ずっとマシだ。あのときは本当に死を覚悟した。私は不老だけど、たぶん、不死ではないから。
時代が変わって、本当に良かった。
「私、ベビードール着たの初めて」
「え」
頭を少し持ち上げて、翔吾くんにキスをする。彼の少しカサついた唇が、緊張していたことを告げている。彼の愛の言葉は本物だ。だからこそ、困ってしまうのだけど。
「いっぱい食べて?」
翔吾くんの気持ちに応えることはできないけど、体だけなら応じてあげられる。それだけで満足できないから、彼はあんなことを言ってしまったのだと思うけど……でも、体は正直だ。萎えていたはずのものに、硬さが戻ってくる。
「いっぱい、中に出して」
「あかりっ」
翔吾くんの荒々しいキスに、私は優しく応じる。
男って、本当に、かわいい生き物だ。

