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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携
ジェラートのコーンの包み紙をぐしゃりと握り潰して、健吾くんは私を見つめる。
「翔吾は、あの……あと、吐いた」
三人でしたあと、のことだろうか。
私は健吾くんに連れられて一緒にシャワーを浴びて、その間の翔吾くんの様子を知ることはできなかったはずだけど。
「わかるの?」
「二十年、兄弟やってんだよ。わかるよ」
「そういうもの、なんだ?」
「翔吾は昔からストレスに弱いから。香水をつけるのだって、おまじないみたいなもんだよ。自分に暗示をかけてる」
暗示を、かけてる?
「あかりさんと出会ってから、翔吾は変わったよ。譲りたくないものができた、みたいな顔して、優しくなった」
「そうなの?」
「執着心、見えなかった?」
あぁ、それなら、わかる。
確かに、少しずつ、執着心が増えてきていた気がする。首筋につけたキスマークにしても、そうだ。
「翔吾が誰かに執着するなんて、今までなかった。誰にも、なかったんだよ」
「……けん」
「あかりさんだけだ」
健吾くんの目から、視線が外せない。見据える目が、訴えてくる。
「あんただけなんだ。翔吾が執着心を抱いたのは」
風が止み、静寂が訪れる。けれどまた、風が吹く。髪を乱し、衣服を乱し、心すら乱していく、風だ。