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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「あいつの気持ちを、受け入れてやってくれよ」

 木々のざわめきと蝉時雨の中、静かに落とされた言葉。
 私は、健吾くんの言葉に、何も返すことができない。

「俺は翔吾からあかりさんを奪いたくない」

 出会って一ヶ月くらいの女より、二十年隣にいた兄のほうが大事だと、健吾くんの目が語る。

「どんな形でもいいから、翔吾のそばにいて――愛してやってくれ」

 愛して。

「それができないなら、きっぱり、別れてやってくれ」

 別れ、て。

「翔吾は荒れるだろうけど、俺が見てるから。ちゃんと」

 健吾くん。

「だから、あかりさんも、覚悟を決めて欲しい。それがどんな結果でも、俺は受け入れる」

 覚悟を。決める。
 健吾くん、それは……その結果は、たぶん、あなたを。

「大丈夫。俺は――」

 いつの間に、そんな穏やかな顔で、笑うようになったの、君は。
 いつの間に、そんな優しい目をするようになったの。

「――俺はあんたの、セフレ、だから」

 セックスをするだけの。
 体だけの、友達。

 それだけの、関係。

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